【感想】フィンランドの伝統楽器「カンテレ」を体験!
2022年12月末に、フィンランドの伝統楽器「カンテレ」のレッスンを受講しました。この記事では、カンテレについての基礎知識やカンテレにふれた感想をお伝えします。
日本では北海道などで演奏活動が盛んなようですが、もっと多くの方にこの楽器を知っていただけたらいいなと思います。 また、記事の後半ではフィンランドのカンテレミュージアムもご紹介します。お楽しみに!
カンテレってどんな楽器?
カンテレは、フィンランドの伝統的な撥弦楽器です。ツィター(オーストリア・ドイツ・スイスなどを中心に弾かれている弦楽器)に似た形状で、フィンランドのでは国の楽器として位置付けられています。
国の楽器ってことは、フィンランド発祥なの?
ユヴァスキュラのカンテレ博物館の館長さんによると、フィンランド周辺のロシアやラトビアなどにも似た楽器があり、どこの国のものが起源なのか正確にはわからないそうです...。
例えば、ロシアの「グースリ」やラトビアの「コォクレ」は見た目がよく似ています。 起源についてはよくわかっていませんが、カンテレはフィンランドの民族叙事詩「カレヴァラ」の中にも登場しており、「フィンランドの楽器」というイメージが浸透しています。
カンテレの種類
カンテレには、弦の数が異なるさまざまな種類があります。もともとは5弦の小さな楽器で、ソロ楽器というよりは歌や踊りの伴奏用に使われていたようです。
改良を重ねて、弦の本数や形状が異なるモデルがたくさん生まれたよ!
5弦〜19弦のカンテレはPieni Kantele (小型カンテレ)、それ以上の弦を持つものはIso Kantele (大型カンテレ)に分類されます。
小型カンテレ
5弦〜19弦の小型カンテレは、膝または机に乗せて演奏します。少し大きめの10弦以上のカンテレの中には、ストラップ付きでギターのように肩からさげて演奏できるものもあります。
今回私がレッスンを受講した先生は、赤色のボディがかっこいいストラップ付きカンテレをお持ちでした。憧れます...。
私は全くの初心者だったので、まずは一番基本的な5弦カンテレのレッスンをしていただきました。たった5本しか弦がないのに、想像以上にいろんな曲を演奏できることがわかり、驚きました。
伝統楽器ってシンプルだけど奥が深い!
小型カンテレ(5弦)のレッスン
まず、基本的なC、F、G(Ⅰ・Ⅳ・Ⅴの和音)のコードの押さえ方を習いました。左手の指でコードを押さえ、右手の指でジャン!とかき鳴らすように弾きます。
基本の3つのコードがマスターできれば、多くの歌の伴奏ができます!
メロディーの弾き方ですが、これは少し苦労しました。私は普段ハープを弾くので、その癖がでてしまい、奏法の違いに慣れるまでに時間がかかりました。
カンテレは、「弦をはじく」というより「指で弦の上をスライドして次の弦で止める」という感覚です。この優しいタッチが、あの優しくて神秘的な音を紡いでいることがわかりました。
即興せよ!?
カンテレの曲では、繰り返しの際にリズムやメロディーを即興で少しずつ変えて自分の演奏を作ることが大事なようです。 私はこれまでクラシック音楽(ピアノ・声楽)に親しんできたので、あまり即興演奏に慣れていませんでしたが、同じコードの中で自由にメロディーを作ることは本当に楽しかったです。
また、基本「楽譜通り」のクラシック音楽とは違い、最初は楽譜を使わず先生の演奏を耳で聴く→まねるの繰り返しでした。古い伝承曲には楽譜がない曲も多いので、これが一番本来に近い伝統音楽のレッスンなのかもしません。
先生の演奏に集中!視覚や聴覚が研ぎ澄まされるような感じがしたよ!
大型カンテレ
20弦以上あるカンテレは、大型カンテレに分類されます。今回私がレッスンで弾かせていただいたのは、大型カンテレの一つである「コンサートカンテレ」。38~39弦のものが一般的なようです。
↑コンサートカンテレのレッスンの様子です。
大型カンテレは箱形になっていて、シンプルな板に弦を張っただけの小型カンテレより大きな音が出ます。小型カンテレでは叶えられなかった、深い低音や輝くような高音を楽しめるところも魅力的です。
このサイズだと、さすがにもう膝には乗らないよね...?
大型カンテレは、机の上に乗せて演奏します。また、大きな特徴として、響きを消すための消音板がついています。
ミュート板やダンピングボードと呼ばれているよ!
大型カンテレは弦が増えた分、たくさんの音が重なり合って「もわ〜ん」というサウンドが生まれやすくなっています。それを解消するために消音版が開発されたんですね。
この消音版をメロディー+伴奏と同時操作するのは、初心者の私にはとっても難しかったです。いつか、クリアな音が出せるようになりたいです。
大型カンテレ(コンサートカンテレ)のレッスン
レッスンではコンサートカンテレ(半音階調整用レバー付きの大型カンテレ)を弾かせていただきました。まずは、基本の手の構え方、そして「となりの弦へ指をスライド→スライドした弦で指を止める」の基本の動きを練習しました。
コンサートカンテレの弦の音はこんな感じです↓ その後、可愛いイラスト付きのテキストに沿って、少しずつメロディーを弾く練習をしました。意識していないと、ハの字にした腕のフォームがすぐに崩れてしまい、なかなか難しかったです。
クラシックの奏法では腕をハの字、フォークの奏法では腕をまっすぐにするよ!
レッスンが進み、メロディーや伴奏...と同時に鳴らせる音が増えるにつれて、あの「もわ〜ん」を解消しなければならなくなりました。
そこで教えていただいたのがフィンガーミュート。1音弾く→次の音を弾く直前に弾いた音を指で止めて消す、という奏法です。
メロディーを「消しながら」弾くって難しい...。
カンテレの演奏は、同時にやらなければならないことが想像以上に多く、頭をたくさん使う楽器だと思いました。一曲演奏できるまでには、相当な練習時間を要すると思います。
でも、こんな素敵な音の楽器だったらいつまでも練習していたい!と思いました。
指に〇〇ができた!?
カンテレはスチール弦のためでしょうか、レッスン終了数時間後に、右手の人差し指にマメができていることに気づきました。はじめてギターに挑戦して、指にマメを作った日のことを思い出します...。
マメは少し痛かったですが、私が普段弾いているハープのナイロン弦と金属製の弦との感触や音色の違いを楽しむことができました。
ユヴァスキュラのカンテレミュージアム
カンテレに少し興味が湧いてきましたか?カンテレの歴史や楽器についてもっと知りたいという方は、フィンランドのカンテレの博物館を訪れてみてはいかがでしょうか。
私の住むフィンランドのユヴァスキュラには、カンテレミュージアムがあります。2022年夏に訪れた際、館長さんが英語で丁寧にカンテレの歴史を説明しながら、館内を見せてくれました。
様々な種類のカンテレ、そしてフィンランド近隣国のカンテレの仲間にも出会えるよ!
ユヴァスキュラのカンテレミュージアムは、予約制の開館のようです。12月初旬から1月の初旬までは、クリスマス休暇のため休館となっているようです。
ミュージアムでは、館長さん自らコンサートカンテレの演奏も披露してくださいました!実は、私がコンサートカンテレの音色を聞いたのはそれが初めてでした。 その演奏がとても素敵でした。カンテレの音色と曲の美しさに、両目から感動の涙が止まりませんでした。こんなことはめったにないのですが...。
その時に演奏していただいたのが、Iltakaste Ilomantsissa (イロマンツィの夜露/夕映のしずく)。フィンランドの作曲家ハンヌ・スルヤラハティによるロマンチックな作品です。 ぜひ聞いてみてください↓ 演奏の様子がわかりやすいのはこちら↓
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まとめ
今回は、フィンランドの伝統楽器カンテレの体験談をお伝えしました。日本ではまだまだ見る機会の少ない楽器だと思いますが、本当に魅力的で奥が深い楽器なので、より多くの方に興味を持っていただけたら嬉しいです!
私は現在、フィンランドで大学院生をしています。フィンランド留学に関心のある方はこちらの記事もぜひお読みください↓